「橋脚壁面アート」作品選出について

 当法人はこれまで、地域の有志のお力を借りながら、国道246号高架(新二子橋)の橋脚の落書きを消す活動をするなど、水辺空間の良好な環境を創出する活動(かわのまちアクション)を行ってきました。

 同時に、この橋脚壁面を「巨大なキャンバス」と見立てて、アート作品を通じて地域の人へのメッセージを伝える公共インフラとして活用し、シティプライドや共感醸成を高めるアイデアを検討してきました(詳細はこちら)。

 この度、Futako Tamagawa Light It Blue Parkの開催に伴い、地元・上野毛にキャンパスを置く多摩美術大学と連携し、同校在学生を応募対象に橋脚壁面に展示する作品デザインの募集を行いました。

 その結果、5つの作品応募をいただき、その中から下記の1点が審査委員によって選出されました。

 下記に選出作品とそこに込められた思いをお知らせし、併せて各審査委員の皆さまの選評などもご紹介いたします。

【選出作品】

制作者:多摩美術大学大学院美術研究科 デザイン専攻統合デザイン研究領域 修士1年 岡村優華さん 

作品タイトル:「みんなを繋ぐ心の橋」

作者コメント:

 多摩川付近の河川敷はいつもたくさんの人が溢れかえり、国籍、年齢、性別、関係なく、すべての人にとって平等な憩いの場となっています。

 私はそんな多摩川が大好きで、暇さえあれば多摩川に出向くのですが、その度に、多摩川で出会う全ての人たちが、自分の昔からの友達のような不思議な気持ちになります。

 それは、多摩川が自然の美しさで、私たちの心を知らず知らずのうちに繋いでいるのではないのだろうか、と私は考えます。

 これからも、誰にでも平等で美しく、私たちの心をつなぐ架け橋になってもらいたい。

 そんな思いを込めて、この橋のデザインを考えました。

【作品審査会】

日時:2020年8月7日(金)17:00-18:00

審査委員:

(委員長) 佐藤 正一氏 一般社団法人 二子玉川エリアマネジメンツ 代表

 保坂 展人氏 世田谷区  区長 

 澁谷 慎一氏 関東地方整備局 京浜河川事務所長

    松本 順一氏 玉川町会 会長

 名川 志信氏 二子玉川振興対策協議会 会長

    高田 直樹氏 東神開発株式会社 渉外担当部長

    二宮 道彦氏 二子玉川ライズS.C. 総支配人

    米山 貴久氏 多摩美術大学 教授

    加納 豊美氏 多摩美術大学  教授

(順不同)

【審査基準】

 テーマである「人と人を繋ぐ架け橋」や二子玉川らしさ、この作品が橋脚に掲出されていたら良いなど、各審査委員の主観でお好きなデザインを選んでいただく。

【審査方法】

 応募されたデザインをA3に出力し、本会議室テーブルに配置。各委員が10分ほど鑑賞する時間を設け、その後、当日配布予定の投票用紙に各自、1位・2位の作品№と選考理由のコメントを記入いただき提出。その場で委員長と事務局で開封し、投票結果を発表。仮に票が割れた場合は上位2案で再投票を行い、最優秀作品を決定する。

作品を選出する審査委員の皆さま

【選評コメント】

作品を選出する審査委員の皆さま
作品を選出する審査委員の皆さま

松本順一氏:ぱっと見た感じで決めました。親子連れ、お年寄りから子どもまで、いろいろな人が見たときにいいのではないかと。自分も多摩川の河川敷を散歩しますが、知らない人であってもすれ違う時には「おはようございます」とか「こんにちは」と声をかけます。そこで挨拶を返してくれる人がいる。そういうイメージから、水辺の橋脚にはこういう明るい感じがいいのかな。

名川志信氏:正直、私が審査委員でいいのだろうかと思う位、自分は美的感覚が全く無い、と思っているのですが。応募作品は制作者それぞれの方が、それぞれの思いがあって、時間をかけてですね、すごい頑張って描いてくださったんだなというふうに感じました。松本さんも仰ったように、水辺のあの場所にはどんな人が見ても1番わかりやすい、伝わりやすい作品がいいと思いました。

二宮道彦氏:各作品のコンセプトを拝読して、皆さんしっかり多摩川のこの場所の価値ということを考えながら描いていただいたんだなと言うことがよく理解できました。新型コロナウイルス感染症による制限がある中で、屋外空間である河川敷は比較的密にならずに唯一人々が集えるような場所です。地域の方々もその価値を再発見していたところではないかと思い、そういった意味でこの作品は、「人と人同士が繋がれる場所」がストレートに表現されているというところがふさわしいと思います。

加納豊美氏:私は選出されたのとは違う作品へ票を入れました。今回の募集の趣旨においては、この岡村優華さんの作品が最も相応しいデザインだと思っていますが、そう思いつつも別の方の作品の「なんだこれは?」と、人を立ち止まらせる力という魅力にも注目しました。立ち止まって近づいて作品をよく見ることで発見するメッセージがある。それを発見した人、さぞかし嬉しいだろうと思うのです。「YUME」という文字が「YOU & ME」にも読めて、これも何か深いなと思ったり。立ち止まった人にとってお得感のあるデザインということで、スーパーマイノリティーとして1票を入れるならこれだろうと思いました。

保坂展人氏:2つの作品で迷いました。よくコンセプト読んでみると一つはメッセージ性がとても強かった。ただ、メッセージやコンセプトが壁面にテキストで書かれるわけじゃないと思うので、皆さんと同様に「わかりやすさ」、それから、子供たちからお年寄りや海外の方やいろんな方が並んでいる「ダイバーシティー(多様性)」、そして写真を撮ったとき絵になる「スポット効果」みたいなのがあるかなあ、と思い選びました。

澁谷慎一氏:正直、どれも素晴らしい作品で非常に悩みました。いわゆる「公共空間」にあって、なんとなく明るくて、多くの人に共感してもらえるという点でこの作品を選びました。多くの人に和んでもらえる、という意味で、この作品はとても素晴らしいですね。

高田直樹氏:玉川高島屋ショッピングセンターのガーデンアイランドに続く「瀬田アートトンネル」がありまして、そのトンネルの壁面をきれいに彩り、街のシンボルにしようという動きがありました。そこに虹色の絵が描かれたと言う街の歴史がありまして、その際のデザイン審査の場面を思い出しました。今回も同様の趣旨という観点から、「二子玉川」「多摩美」というイメージで「かっこいい」と思う作品を選びました。いろんな意味で「あっ」と驚かせる要素がありつつ、また訴えるものがあるように思いました。

米山貴久氏:審査委員の皆さま、お優しい感想を言っていただいて、すごく嬉しいです。冒頭にも申し上げましたが、もっと悩むほどたくさんの応募数にしたかったのですが、新型コロナウイルス感染症のために学校が開校できず、本当に申し訳ないと思っています。作品は、皆さんがおっしゃるように、「わかりやすさ」だったりイベントとの「親和性」を考えると選出されたデザインが順当なんだろうなと思います。ただ、「絵の質」で見たときには別の作品が良いのかなと思いました。どこがいいかって言うと、橋脚という(橋脚に限らず)「巨大なアート」というふうに見たときに、それを遠くで見たときと近くで見たときに印象が変わってくる。絵の細かいところにいろんな仕掛けがあって、近くで見たときに印象がまた変わってくる。最初は遠くから見て、近くに行ったときとの驚きが違うんじゃないかと。それが巨大アートっていうことを描くにあたっては面白いなと思いました。

佐藤正一氏:3つの作品で悩みました。「見る」と言う観点と「フォトジェニック」という観点。絵を見た人が、その絵に対してコミュニケーション上いろんな仕掛けをやれるということは、裏返すと落書きを誘発する可能性も考えました。結局、肩を組んだりいろんなところにたくさん人がいるみたいなシーンがあり、引きで写真撮ったりするような人を誘発できる仕掛けという点から選びました。そういう意味では(今回は橋脚2面だけの展示ですが)、さらに1面か2面ぐらいアート展示できる資金をつくれるようがんばらなきゃいけないなぁと思いました。今回は橋脚アートの「きっかけ」と言うことで、今後もっといろんな作品を生み出していけるように皆さん、これからもどうぞよろしくお願いします。

審査委員の皆さまで記念撮影